虫歯・口臭・歯周病予防のための正しい歯磨きの仕方

毎日歯磨きをしているのに「虫歯になった」「歯がしみる、痛い」「歯ぐきが腫れた」「臭いがとれない」といった経験はありませんか?
毎日磨いているつもりでも、間違った歯磨きを続けていると虫歯ができるだけでなく、かえって歯や歯ぐきを痛めてしまうことがあるのです。
せっかくの歯磨きの効果を台無しにしないために、今回は正しい歯磨きの方法をご紹介します。
▼目次
こんな人は要注意!
歯磨きをしたのに歯がザラザラする
このザラザラの正体は、歯垢(しこう・プラーク)です。
ザラザラが残っているのは、磨き残しがある証拠です。
歯垢は歯の表面にしっかりと付着しているため、うがいをした程度では取り除くことができません。
歯ブラシなどを使って細かいところまで丁寧にこすり落とすことが重要なんです。
歯磨きをしたのに口臭が消えない
歯磨きをしても口臭が取れない人は、普段から磨けていない場所の汚れが腐敗して臭いの原因になっていることがあります。
また、歯周病が進行して膿(うみ)をもち、口臭の原因になっていることもあります。
口臭は、胃腸、肝臓、腎臓、鼻の病気など、体の不調が原因で起こる場合もありますので、年に一度は健診を受けることも大事です。
虫歯がないのに歯磨きや冷たい飲食物で歯がしみて痛い
ゴシゴシと力任せに歯を磨いていると、歯の根元が歯ぐきから露出して象牙質がむき出しになり、知覚過敏を起こすことがあります。
虫歯や口臭、歯周病を予防するためには、毎日の歯磨きを正しく習慣化することが大切です。
まずは基本。歯ブラシの持ち方
歯ブラシはペンを持つように握りましょう。
無理な力が入らないので、細かく動かすことができます。
しっかりにぎると力が入り過ぎてしまいます。
歯ブラシの毛先を押し付けてしまってきれいに磨けなかったり、歯ぐきを傷つけたりする恐れもあるため、軽く持つことが原則です。
歯を磨くタイミングとは?いつ、何回磨くのがいいの?
「食べたら磨く」が歯磨きの基本です。
汚れた食器と同じで、食べてから時間がたつと歯についた汚れも落ちにくくなります。
最近では、「食後30分たってから磨いた方が良い」と言われることがありますが、それは酸性の食事を頻繁に摂ることで、歯の表面(エナメル質)が酸によって溶かされた状態(酸蝕歯・さんしょくし)になることがあるからです。
しかし、全ての食事が酸性ということはなく、酸性食品があるかどうかを食事のたびに見極めるのは大変です。通常の食事ではそれほど神経質になる必要はないでしょう。
また、就寝中は唾液の分泌が減ることによって細菌が繁殖するため、食後だけでなく、就寝前や起床時に歯を磨くことも効果的です。
歯を磨く回数は「起床時、朝食後、昼食後、夕食後、就寝前」の5回が理想ですが、毎日5回磨くことは難しいかもしれません。
1日の中で、特に就寝前の歯磨きは時間をかけて丁寧に磨き、就寝前にしっかりと磨けるのであれば、夕食後はうがいだけでもしておきましょう。
それぞれのライフスタイルに合わせて、できれば1日2~3回、磨ける時間をとりたいものです。
起床直後の口の中は菌がいっぱい!
起床時に、「口の中がネバネバする」「口臭が気になる」と感じたことはありませんか?
就寝中は口の中をきれいにしてくれる唾液の分泌が減り、乾燥することで細菌が繁殖します。
この細菌が、ネバネバや口臭の原因となるのです。
起床時は、前日の夕食後の口の中と比べて約30倍もの細菌が繁殖しているとも言われています。
ただ、起床時と朝食後、忙しい朝に2回も歯を磨くことが難しい人は、起床時は洗顔と一緒にうがいだけ行い、朝食後にしっかり歯を磨くと良いです。
うがいだけでも口の中の細菌数を減らすことができますので、細菌だらけの口のまま水を飲んだり、朝食を食べたりしないよう注意しましょう。
歯磨きにかける時間はどれくらい?
人によって歯の本数、形、歯並びなどに違いがあるため、はっきりとした時間の目安はありません。
しかし、1か所につき20回程度磨くことを目安にすると、最低でも3分はかかります。
歯垢は歯の表面にしっかりとくっついているので、パパッと磨いただけでは取り除くことができません。
比較的時間の取りやすい就寝前など、一日一回はデンタルフロスや歯間ブラシなどを使って時間をかけて磨きたいものです。
また、「磨いている」と「磨けている」は違います。
いくら時間をかけて磨いていても、同じ場所ばかり磨いていたのでは磨けているとは言えません。
時間よりもきちんと汚れを落とすことに重点を置いて磨くことが大切です。
磨き残しが多い場所
磨き残しが多い場所は、特に意識して磨きましょう。
歯と歯の間
歯と歯ぐきの境目
歯の溝
奥歯の奥側
歯並びが悪い場所
「歯垢染色剤」で磨き残しをセルフチェック
歯垢を赤く染めることができる「歯垢染色剤」を使うと、どの歯のどの部分に磨き残しがあるかを、目ではっきりと確認することができます。
綿棒に染色剤を染み込ませて歯の表面に塗る「液状タイプ」や「ジェルタイプ」のほか、かみ砕いて使う「錠剤タイプ」があります。
歯垢染色剤を塗った後、軽くうがいをしても取れなかったものが歯垢です。
鏡で確認しながら染まった歯垢を落とすよう磨き方を工夫しましょう。
歯垢染色剤は大きな薬局やインターネットで手に入りますが、購入が難しい場合は歯科医院で相談してみてください。
磨く順番を決めておくと、磨き残しを減らせます
時間をかけて歯を磨くことはとても良いことです。
「テレビを見ながら」などの「ながら磨き」も悪いことではありません。
しかし、時間をかけて磨いたとしてもずーっと同じ場所を磨いていたら、その歯磨きの仕方は適切とは言えません。
また、あちこちバラバラに磨くことも磨き残しの原因になります。
磨く順番を決めることで磨き残しを減らせますが、後半になるほど雑になってしまうような磨き癖がある人は、癖をなおしつつ、磨き始める場所を定期的に変えるなど工夫すると良いでしょう。
正しい歯磨きの仕方
現在は、スクラビング法とバス法が一般的です。
スクラビング法
スクラビング法は、健康な歯ぐきの人や、子供の仕上げ磨きに適しています。
歯ブラシの角度は、歯の外側(頬側)は毛先を直角にあて、内側は45度の角度に当てます。
1か所につき10回~20回程度、小刻みに動かして磨きましょう。
バス法
バス法は、歯周病を患っている人に適しています。
歯と歯ぐきの境目に歯ブラシの毛先を45度の角度で当てて、軽い力で小刻みに動かすように磨きましょう。
歯ブラシをより効果的に使うには
前歯や歯並びが乱れているところは、歯ブラシを立てて磨くと歯垢を落としやすくなります。
また、歯ブラシをより効果的に使うには、毛先の全面だけでなく、「先端部(つま先)」「根元(かかと)」「両端(わき)」の部分を使い分けることが大切です。
- 上の歯の裏側・・・先端部(つま先)で磨く
- 下の前歯の裏側・・・歯ブラシを縦にして、根元(かかと)でかき出すように磨く
- 歯と歯の間・・・歯ブラシを縦にして、ヘッドの両端(わき)で磨く
そして何より、正しい歯磨きを身につける一番の近道は、信頼できる歯科で自分にあった歯磨きの仕方を指導してもらうことです。
歯の大きさや形、歯並びや歯ぐきの状態によって、その人に合った歯磨きは違うため、歯科医師や歯科衛生士に指導してもらっておくと安心です。
うがいのし過ぎに注意しましょう
フッ素入りの歯磨剤を使っている場合、何度もうがいをしてしまうと、せっかくのフッ化物まで一緒に洗い流してしまいます。
フッ素入り歯磨剤で歯を磨いた後は、少量の水で1度だけゆすぐようにしましょう。
補助的清掃用具を使いましょう
歯ブラシだけで歯を磨いても完全に歯垢を取り除くことはできません。
歯と歯の間や歯並びが乱れているところには歯ブラシの毛先がうまく届かないため、デンタルフロスや歯間ブラシ、ワンタフトブラシなどの補助的な清掃用具を使って、さらに汚れを取り除きましょう。
デンタルフロス
虫歯ができやすい「歯と歯の間の汚れ」を取り除くことができます。
無理に入れて歯ぐきを傷つけてしまわないように、慣れるまでは鏡を見ながら使用すると良いでしょう。
デンタルフロスには、「糸巻きタイプ」と「ホルダータイプ(柄付き)」とがあります。
歯間ブラシ
歯と歯の間が大きく開いている人には、歯間ブラシがおすすめです。
歯間ブラシにはサイズがあります。
隙間が大きいのに小さい歯間ブラシを使っていては十分な効果を得られません。
だからと言って大きいものを無理やり入れてしまうと歯ぐきを傷つけてしまいます。
初めて使うときは小さめのものから試してみてください。
一番小さなサイズでも入らない場合は、歯間ブラシではなくデンタルフロスを使いましょう。
また、ブリッジという装着物が入っている人は、装着物と歯ぐきの隙間に汚れが溜まりやすいです。
ブリッジとは、残っている両隣の歯を削り、削った歯を土台にして橋(ブリッジ)を架けるように失った歯を補う治療法です。
この隙間は歯ブラシでは毛先が届きません。
土台になっている歯が虫歯になったり汚れが溜まって口臭が発生する原因になりやすいため、歯間ブラシを使って丁寧に磨きましょう。
ワンタフトブラシ
ワンタフトブラシは毛先が小さいため、普通の歯ブラシでは磨きにくいところをピンポイントで磨くことができます。
【毛先が届きにくい場所】
- 八重歯や歯並びが乱れているところ
- 矯正装置が取り付けられているブラケット(留め具)の周辺
- 横を向いたり、歯ぐきがかぶったりしている親知らず
- はえかけの奥歯 など。
また、妊娠中のつわりで、普通サイズの歯ブラシを口の中に入れるのが辛い時期の使用にも適しています。
電動歯ブラシのメリット・デメリット
電動歯ブラシのメリットは、歯を磨く時間を短縮でき、楽に磨けることです。
メーカーにもよりますが、ほとんどの電動歯ブラシはブラシ部分を歯に軽く当てるだけで、汚れを落とすことができます。
しかし、「毛先を強く押し当てる」「普通の歯ブラシと同じように手を小刻みに動かす」など間違った使い方をすると、効果が半減してしまうだけでなく歯や歯ぐきを傷つけてしまうことがあります。
きちんと理解して使用すれば、普通の歯ブラシよりも短時間できちんと汚れを取り除くことができるでしょう。
特に「音波ブラシ、超音波ブラシ」と呼ばれる電動歯ブラシは音波振動によって作られる高速の水流で歯垢を取り除くことができ、推奨している歯科医院も多いようです。
デメリットとしては、充電が必要、置き場所をとる、替えブラシが高価、などがあげられます。
どんなに優れた電動歯ブラシを使っていても磨き残しがあっては意味がありません。
電動歯ブラシを使った場合でも、デンタルフロスや歯間ブラシなどを併用してしっかり汚れを取り除きましょう。
舌磨きのやり方・効果と注意点
鏡の前で「あっかんベー」と思いっきり舌を出してみてください。
舌の表面に白っぽい汚れが付着していませんか?
舌がきれいなピンク色をしていたら問題ありません。
白っぽい汚れがべったり付着していたら注意が必要です。
これは舌苔(ぜったい)と言って、食べかすや細菌、舌から剥がれ落ちた細胞などの集合体で、口臭の原因の一つです。
この舌苔を取り除くには「舌ブラシ」を使って舌を磨くのが一般的です。
普通の歯ブラシでは舌を傷つけてしまうおそれがあるのでおすすめできません。
舌ブラシを使って、舌の奥から舌先に向かって軽いタッチで動かします。
舌ブラシがない場合はガーゼを使っても磨けます。
清潔なガーゼを人差し指に巻き付け、下の奥から舌先に向かって優しくなでましょう。
ただし、舌の磨き過ぎには注意してくださいね。
舌はとてもデリケートな組織です。
ゴシゴシと磨きすぎると舌に傷がつき、口臭の原因になったり味覚障害になったりすることがあります。
多くても一日に一回、それ以上は磨きすぎです。
付着量にもよりますが、気になった時、一週間に数回程度で問題ないでしょう。
歯茎マッサージのやり方と効果
口の中には、それぞれの歯の根元と歯茎の付け根の部分に、合計40以上ものツボがあることをご存知ですか?
歯ぐきをマッサージすることでそれらのツボが刺激され、血行促進・免疫力アップと同時に、唾液の分泌を高める効果が期待できます。
【下準備】
- 爪を切る(歯ブラシを使うときは、やわらかめの歯ブラシやゴム製の歯ブラシを準備しましょう)
- 歯を磨く
【方法】
人差し指の腹を使って、軽い力でクルクルと円を描くよう奥から前へとゆっくりと刺激を与えながらマッサージします。
気持ち良いと思える力加減で行ってください。
特に入浴中は血行が良くなるため、湯船につかりながら行うと効果的です。
また、歯ぐき専用のペーストも市販されていますので、腫れや出血などの症状がひどい場合は歯ぐき磨き粉を併用されるのも良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
せっかく歯磨きをしているのに、間違った歯磨きのせいで虫歯・口臭・歯周病の予防ができないばかりか、歯や歯ぐきを痛めてしまっては意味がありませんよね。
毎日の歯磨きをほんの少し意識して、健康な歯と歯ぐきのために、正しい歯磨きを習慣付けていきましょう。
三好さん(歯科衛生士)
東京都在住。実務経験15年以上のベテラン歯科衛生士。
現在も歯科医院に勤務し、より良い歯科医療を日々追及している。
・歯の治療前に読もう(クインテッセンス出版)